杉下家、姉弟の平和な日常

「あんた、年上に向かってなんて態度なの」

姉は剛さんの腕の中で体の向きを変えて俺に向き直る。

「ちょ、ちょっと待った、ごめんなさい。すみません、剛さん。その、ケンカの延長でつい口が滑って・・・」

姉が見せる鬼の形相に、自分の非を自覚している分俺はすぐに下手に出る。

「いいよ、俊也くん。そう言われても仕方ないし」

「ふん。まあ、謝ったから許す」

穏やかに頷いてくれる剛さんの後に続いて、姉は顔を背けながら高圧的な態度。

「なんで姉ちゃんに謝らなきゃなんねーんだよ」

つい、売り言葉に買い言葉で俺ぼそりと言い返してしまうと、沸点の低い姉は鋭し視線をこちらに向けてくる。

俺は自覚はしているけれど、姉はもう少しトラブルメーカーである自覚をしたほうがいい。

「まあ、もう誤解も解けたでしょ。このくらいにしておこう」

「「これは、杉下家の問題!」」

また、姉と声が揃うのに余計腹が立つ。

性格は環境因子が大きく影響するというが、痛感している。

姉とぶつかり合うのは根っこの部分が一緒で、地上に出ている部分が近いけど別だから。

わかっちゃいるけど、それを家族だけのルールとするものか、社会的に通用するルールだと思うのか、大きく違う。

ある意味、俺は、姉を社会的に通用するように指導しているだけだ。

「だったら僕も入れて欲しいのに・・・ホント仲いいんだから」

そう言うなら、もうちょっと姉の扱いに慣れて欲しいとこっそり思いながら、姉の暴動をそっと背後から抑えてくれている剛さんに一瞬視線を移し、剛さんがぼやくことが確かに一理あるとは思った。

ケンカするほど仲がいいというのはよく言ったものだ。

姉には絶対言わないけれど。


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