杉下家、姉弟の平和な日常
いい加減、捻じ曲がった屁理屈をこね始めた姉から情けなくも逃げ出すように二人を置いて立ち去り、必要以上の疲労感を抱えながら玄関を開けると、お帰りのチューをしている両親に遭遇。
まあ、別にいつものことだから別にいいんだけどさ。
家の中だしね、いいんだけど。
・・・なんか、今日厄日?
そして、それが当たり前になっている両親は照れる様子もなく、優しい笑顔つきで「おかえり」の言葉をもらう。
むしろ俺の方が軽く引いて「ただいま」を返すと、気分が乗っている母からの一方的で熱烈なお帰りのチューをイヤイヤ頬に受ける。
子どもの頃ならまだしも、大学生になってまでこの習慣を受け入れることを強要され続けている俺の身にもなってほしい。
少なくとも、そう思っているのが、この家では俺だけだという絶望的な事実を前に、とっくに変革を諦めている。
それを見ていた父親に「親子仲良しでいいなぁ。妬けちゃうなぁ」とぼやかれ、早急に、早急に家を出ようと心に誓った。
杉下家は今日も平和です。