杉下家、姉弟の平和な日常
姉とデート
女の買い物という最も非効率的な行動のお供。
彼女の買い物ならまだしも、何が悲しくて実の姉の買い物に付き合わなきゃならないのか。
付き合うと言ってもただ傍に立っているだけだ。
だらだらと、あれでもない、これでもないと悩む姉に、文句も言わず大人しく付き従う。
女性は悩むのが好きな生き物だから、十分に悩ませてあげなさい、というのは父の教え。
ちなみに、どっちがいい?と聞かれたら絶対に答えてはいけない。
もちろん、これも父の教えだ。
待っている間は適当に相槌を打ちながら、こっそり彼女に現状を伝えるメッセージをぽちぽち送っていたら、合流したいという話になって予定外のデートの気配に顔がにやける。
「顔崩れてるわよ」
携帯に集中しすぎていた俺は姉の声で意識を引き戻され、とっさに手で顔を覆う。
「いいだろ」
「携帯貸して。あ、やっぱり例のケイちゃん」
あっという間に携帯を奪われて無遠慮に内容を読まれる。
別に隠す必要のない内容なので慌てはしないが、いい気分はしない。
「返せって」