杉下家、姉弟の平和な日常
「ケイちゃん呼んで3人でリージュリー行こうよ」
共通の友達を呼び出すかのような気軽さで姉は合流を提案するが、姉は彼女の圭子とは面識がない。
「知らないのに勝手ケイちゃんって呼ぶなよ」
「ママが言ってたもん」
「母さんは母さん、姉ちゃんには話してない」
「誘っといたから。ハイ」
帰ってきた携帯を見ると、リージェリーでお茶をするのに誘っている。
一応、『by姉』とつけてあるのが、いいのか悪いのか判断に迷う。
「勝手にメッセージ送るな」
「可愛い彼女に会えるかもしれないからいいじゃない」
「あのなぁ」
呆れて注意しようとしたら、握り締めた携帯がメッセージの着信を知らせる。
色よい返事を素直に喜ぶのは姉への敗北を感じて俺は口元を引き締めた。
「来るって?」
崩れないように口をへの字に曲げていた俺の顔を、姉はにやにやしながら覗き込む。
「ケイコの都合とかもあるだろ。突然会ったこともない身内に呼び出されて会うってどんな付き合いだよ」
「あら、お姉さまに紹介できないような子と付き合ってるわけじゃないでしょ。ママには話してるんだから。私だけハバってずるい」
「母さんにだって彼女と出かけるって言っただけで、彼女の話なんてしてねーよ。俺の彼女と会ってる時間あるなら大事な剛さんと仲直りしてこいよ」
「・・・身に覚えのない浮気疑惑かけられたから、会いたくないの」
珍しく沈んだテンションで零した喧嘩の理由に、首をかしげる。