クールなヒーローに甘いお菓子を。
「えへへ。私の友達が千秋ちゃんと同じ中学でさー。貰ったんだよねー」
楽しそうな西山のことなんか今は気にしている余裕がない。
僅かだが手が震える。
…これは、千秋の一番辛かった頃。
千秋が転校してくる前の頃だ。
濡れた制服が透けて、腹部に青い痣が見える。
「全部知ってるんだ、あたし。千秋ちゃんの家族のことも」
「……ッ!?」
「あ、動揺してる。けど安心して?舜があたしと付き合ってくれたら、誰にも言わないから」
どこまで知っているのか分からないが、西山の言葉は言い返せば「付き合わないと周りにバラす」と言われているも同然だった。
西山と付き合わないと千秋を傷付ける、ね…。
なるほど。そういう意味だったか。
今更気付いたところで、俺の出来る選択はもう1つしかない。