クールなヒーローに甘いお菓子を。
朔と白咲くんがいなくなった直後で、隣にいる真希はニヤつきながらこちらを見る。
「…なんですか」
「いや〜。本郷くん、溺愛全開だなーと思って」
「っ、は?」
明らかに楽しんでいる真希は、そう言いながら私を肘で小突いてきた。
「家だと思っと甘々になるんじゃない?いーなぁ、一緒に住んでるって」
「ちょ、真希…!」
誰かに聞かれたらマズイと慌てて彼女の口を塞ぐ。
が、誰も気にした様子がないことを確認して胸を撫で下ろした。
一緒に住んでる、ね。
確かに、好きな人と一緒に住めるなんてそんな幸せなことはないと思う。
「あ、千秋ニヤついてる?」
「ニヤついてませーん」
この時の私は忘れていたんだ。
朔との同居は、いつかは終わるってことを。