クールなヒーローに甘いお菓子を。

* 会いたくなかった





「あ、ちあ」

「ん?何?」



ある日の土曜の朝。


いつものように食後の珈琲を飲んでいると、目の前に座る朔が思い出したように私の名前を呼んだ。




「そういえば今日、母さんが一旦帰ってくるって」

「えっ!?仁美さんが?」



久しぶりに…いや、正確には初めて聞いた仁美さんの帰宅の報告に、思わず声をあげてしまう。





朔と暮らし始めてから3ヶ月。



驚くことに、初日以来仁美さんは一度もこの家に帰ってくることはなかった。




「なんでまた急に…」


久しぶりに仁美さんに会えるのは嬉しいけど、余りにも唐突で驚いてしまう。





「や、それが俺もなんで急に帰ってくるって言い出したのか分かんないんだよ」

「へ?仁美さん、何も言ってないの?」

「昨日の夜に『明日帰るね』のメール1本だけ」

「あはは…仁美さんらしい」



どうやら返事をしても返信は来なかったらしい。



だから、何時に帰ってくるかも分からないんだとか。




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