クールなヒーローに甘いお菓子を。
仁美さんの他に、もう1人いる。
「さっ、入って入ってー」
「じゃあ、遠慮なく」
仁美さんに促され、玄関に入った1人の女性。
余りにも驚きすぎて、朔の心配する声も聞こえなかった。
「…あら」
「っ!」
その人物と目が合った瞬間、自分でも分かるくらいに体がビクつく。
「久しぶりね、千秋ちゃん」
「………お母さん」
その人物────お母さんは、私の顔を見て穏やかに微笑んだ。
実の娘ながらに綺麗だと思うその人は、相変わらずの派手な服と派手な化粧。
「お邪魔します」
よそ行きの表情で軽くお辞儀をすると、仁美さんと一緒にリビングまで入っていった。