クールなヒーローに甘いお菓子を。



「お母さん…は、なんで今日、来たの?」



あぁ、緊張してるのがバレバレだ。


口がうまく動かない。




「あぁ、それは」

「それはねー、私が誘ったからよっ」


お母さんの言葉に被せて仁美さんが代わりに答える。



「あ、そうなんですね…」


情けない返事しかできなかったけど、これが私の精一杯だった。




「たまたま空港に用があって、そしたら亜希子さんとバッタリ会うんだもん!だから今日お誘いしちゃった」


そう言う仁美さんはとても可愛らしいけれど、どうも今の私にはうまく現実を受け止めきれていないらしい。




どうして誘いに乗ったの?


どうして会いたくないはずの娘に会いに来たの?



それだけが、ずっと頭の中を巡っていた。




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