クールなヒーローに甘いお菓子を。
ようやくゆっくりと顔をあげ、お母さんを見る。
バチっと目が合った瞬間、お母さんが微笑んだのを見て嫌な予感がよぎった。
「ねぇ、千秋ちゃん」
「な、なに」
逃げたくなる気持ちを必死に抑え、精一杯に返事をする。
「また、一人暮らししてみたら?」
「…っ、は?」
唐突な提案に、自分でも顔がこわばったのが分かった。
「なんで?」
「だって、年頃の男女が1つ屋根の下だなんて不安だもの。付き合ってるとは言っても、何が起こるか分からないでしょう?」
「そんなの、」
「分かるわよ。千秋ちゃんの母親ですもの。そうだ、また戻ってこない?一緒には住めないけど、また近くで暮らしましょうよ」
私の意見なんて御構い無しに勝手に話を進めるお母さん。
「寂しいとは思うけど、転校しても中学のお友達がいるじゃない。ね?そうしましょう」
なんで。
なんでこの人はこうも、自分の思い通りにしたがるんだ。