クールなヒーローに甘いお菓子を。
「…生意気な子」
そう言ったお母さんの口元が少し緩んで見えたのは気のせいだろうか。
私が何を言っても一切靡かずに自分勝手なことばかりをするお母さんを、ここまで諦めさせたのは初めて。
未だに繋がれたままの手を僅かにぎゅっと力を入れれば、朔からもぎゅっと力が加わった。
…ありがとう、朔。
仁美さんにもお辞儀をすれば、微笑み返してくれた。
「じゃあね、千秋ちゃん」
それからすぐ、お母さんと仁美さんは帰って行った。
最後まで私たちの間にちゃんとした会話はなかったけれど、下手に話すよりこれでいい。
いつか、また家族4人で暮らせることを期待して。
私はそっと、お母さんの背中を見送った。