クールなヒーローに甘いお菓子を。
ちあなりに、話す覚悟を決めたことが分かる。
…話してくれるのか、俺に。
思うべき状況じゃないのは分かっているけれど、そのことが嬉しいと感じてしまう。
本当はずっと、気になってたんだ。
俺が料理を作るたび、弁当を作るたび、ちあの「ただいま」に「おかえり」と返事をするたび。
ちあはいつもその事に凄く喜んで、そしてどこか悲しい顔をするから。
「私ね、父親がいないんだ」
「……」
「だから、今のお父さんと夏輝とは、血が繋がってない」
ポツリポツリと話し始める彼女の手に、俺も僅かに力を込めた。
大丈夫。ちゃんと聞いてるから。
そう、彼女に言い聞かせるように。