クールなヒーローに甘いお菓子を。
「俺はここにいるよ、ちあ」
そう言って小さな彼女を抱き締めれば、彼女はやっと涙を流した。
「う、ん…。ありがと…、朔」
泣きながら俺の名前を呼ぶ彼女に、そばにいたいと強く思う。
「…それでね、朔」
「うん」
そして俺の腕の中で、ちあはまたゆっくりと話を始めた。
…ちあは、一人暮らしを始めた後も亜希子さんに暴力を受け続けたらしい。
気に入らないことがある度、ちあの住むアパートへわざわざ出向いて手を挙げていたそうだ。
「お母さん…、今は勝手で強い人だけど、その頃は違って。ちょっと、精神的に不安定なところがあったから…」
そう言うちあは、辛いというより悲しげな表情を浮かべた。
心のどこかでは、1人の母親として亜希子さんを想っているんだろう。