キミじゃなきゃダメなんだ
「....なんで笑うの」
「えへへ。こっちの話です。てゆーか、先輩もリレー選手なんですね?失礼ですけど、ちょっとびっくりしました」
だって先輩、体育祭のこと『苦手』って言ってたし。
『頑張る理由がよくわからない』とまで言ってたんだもん。
まさか、リレー選手になってるとは思わないよ。
そう言うと、汐見先輩は気だるそうに両手をズボンのポケットに入れて、「うん」となんだか不機嫌な声で言った。
「僕も、できればやりたくなかったんだけどね。諒にハメられた」
松原先輩にハメられた?
「どういうことですか?」
「五十メートルのタイム測るときにさ。このリレーの選抜基準になること、忘れてたんだよね」
「あ、私もです!つい全力で走っちゃいました」
「...うん。君はそうだろうね。絶対リレー出るだろうなと思ってたよ」
君は、ってどういう意味なのか。
ちょっとムッとした顔をすると、先輩は小さく笑って「全力なのはいいことだと思うけど」と言った。
....まぶしいその笑顔、私に向けないでください。死ぬ。