キミじゃなきゃダメなんだ
「......ありがとー、ございます」
悔しくてそれだけを言うと、先輩は面白そうに私を見て、話を続けた。
「僕が走るときになって、『俺よりいいタイム出したら、昼の飲み物おごる』って諒に言われてさ。あいつがそんなこと言うの珍しかったから、気まぐれで了解しちゃって」
ああ、なるほど。
その後の展開が予想できて、思わず苦笑いがこぼれた。
「ちょっと本気で走ったのに、あいつは競うどころか、適当に走っててさ。当然タイムは僕の方がよかったから、おごらせたけど。今思うと、これが狙いだったんだろーね」
どうやら、松原先輩はリレー選手にもなってないらしい。
「あいつにあんなこと言われなきゃ、僕も適当に走るつもりだったんだよ。そう言ったら、『体育祭のリレーで走るヒサを見てみたい』とか言われてさ。最悪だよ」
眉間にシワを寄せて、愚痴をこぼす先輩。
でも、心なしかそこまで怒ってないような気もする。
相手が松原先輩だから、なのかな。
私の中では、チャラくて明るい人ってイメージしかないんだけど。
汐見先輩と、いちばん仲が良いみたいなんだよね。
誰から見ても性格は正反対なのに。
まぁ、私と里菜とチョコちゃんも、個性バラッバラだけど。