キミじゃなきゃダメなんだ
クールな汐見先輩でも、そういうふうにからかわれること、あるんだな。
体育祭に対してやる気のない汐見先輩が、よりによって大注目のリレーを走るっていうのは、確かにちょっと見てみたいかも。
不本意にも選抜されちゃった先輩は、気の毒だけども。
それはそうと、ちょっと本気で走ってリレー選手になれるってことは、汐見先輩ってもしかして。
「....あの」
「何?」
「先輩って、運動は得意なんですか?」
ていうか運動までも得意なのですか?
私がおそるおそる尋ねると、先輩はちょっと考えるような顔をして、「どーだろ」と言った。
「可もなく不可もなく、ってとこじゃない。ただ、今回のクラスの男子の五十メートルは、僕がいちばんタイム良かったらしいけど」
「!!」
なんですと。
先輩、めちゃくちゃ足速いじゃんよ。
それで体育祭『苦手』とか言うなんて、もったいない。