キミじゃなきゃダメなんだ


私の返事に、児玉くんは「この前もすごかったよな」と穏やかに笑った。


「江藤に仕事押し付けられて、本田が困ってただろ。あんとき、クラスの誰も助けようとしてなかったじゃん。情けねーけど、俺も見てるだけだった。でも、お前は真っ正面から勝負してたよな」


....あ、あのとき、あの場にいたのか。児玉くん。

江藤っていうのは、そのときの女子のことだ。


なんて返事をすればいいのかわからなくて、変な顔になる。

児玉くんはそんな私を見て、明るく笑った。



「あんときさ、俺、こいつすげーなって思ったんだよ。マジでカッコよかった、お前」



...その言葉を聞いて、なんだか不意に泣きそうになった。


あのあと、あの場にいたクラスメイトの反応とか、実はちょっと怖かったし。

水ぶっかけてきた女子たちの怒りは、言うまでもないし。


出そうになった涙をぐっと堪えて、うつむきがちに笑った。



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