キミじゃなきゃダメなんだ
「じゃーな、丸岡。リレー頑張ろうな」
「うん。手伝ってくれてホントにありがと。がんばろーね」
体育倉庫の前で児玉くんと別れて、グラウンドの方へ戻る。
児玉くんももちろんリレー選手。
リレーは男女混合で、私がバトンを渡すのは児玉くんなんだよね。
うんうん、ますますやる気が出てきた。
頑張ろう!
おー!とひとりで意気込んでいると、数十メートル先にいる誰かと目があった。
あはは。私、実は視力がとても良いんです。
スマホ依存症でコンタクトから離れられないチョコちゃんに、いつも羨ましがられるんだよね。
目があったその人の表情は、何故か不機嫌そのものだった。
「顔怖いですよ、汐見先輩」
首をかしげながら、近づく。
『汐見先輩がなんらかの用事で私のもとへ来てくれる』っていうのが、すっかり私の中で日常になったのを感じた。
だって今、汐見先輩の登場にあんまり驚いてないもんな、私。