キミじゃなきゃダメなんだ
「....ごめん。今のは、ただの八つ当たりだ」
先輩はそう言うと、今度は私としっかり目を合わせてくれた。
「....ちょっと、焦った。僕にとって『女の子』は君しかいないけど、君は違うんだよね」
...違わない、ですよ。
これだけは、言えるもん。
こんなにドキドキするの、先輩だけだ。
「.........」
でも、言えない。
このことを言うには、今の私の立場って、すごく無責任すぎる。
思わずうつむくと、おもむろに先輩の手が私の頭を撫でた。
「....撫でられてたね。こーやって」
今、私の視界には、彼の足元しか映っていないのに。
その低い声が、確かに嫉妬の感情を帯びてるのが、わかる。
少しだけ苦くて、だけどすごく甘い彼の気持ち。
聞いたことのない声色に、頭の芯が熱くなった。