キミじゃなきゃダメなんだ
「やっとうれしそーな顔してくれるのかと思ったら、そうやって抑えてるし。かと思えば他の男には嬉しそうな顔してさぁ。なんなの?君は僕の顔を散々褒めてくれるくせに、ああいう顔はしてくれないんだ?」
「ま、待ってください。ちょっと待って」
「無理」
「お願いします!!」
わーっと叫ぶと、先輩は渋々といった様子で黙ってくれた。
さっきの店でもそうだったけど、どうやら『お願い』という単語を使うと効果的らしい。覚えておこう。
「....えーと...まず、ですね」
「うん」
「本当に正直にいうと、先輩以上に格好いいひとは、私の周りにはとりあえずいません」
「....ふーん。で?」
で!?
で、で、で....で!
「だからその。先輩以外の男性と接していても、最近あまり動揺しなくなったといいますか」
「....へえ」
「仮に...そう、仮に!さっきの人に私がニヤニヤしてたとしてもです。先輩以上に格好いいなぁとは思いませんし、正直ちょっとイケメンだなぁとは思っちゃいましたけど、でも」
「思ったんだ?ふーん、へえ、そう」
「でも!!前ほど心乱れることはなかったです。そう、なかったんです!」
これは本当だ。
先輩と出会う前の私だったら、さぞ『今日遊園地に来た甲斐があった...』とまで思っていたことだろう。妻子ある人を相手に。我ながら節操がない。