キミじゃなきゃダメなんだ


「だから!その、先輩がムカつく必要はないんですよ。そう、ないんです!」


熱を込めて説明する。

なかなか恥ずかしいことを言ってるぞ、今。彼氏じゃない人を相手にこれ言うの、すごく勇気がいると思うんですよ。


だけど、先輩の顔は晴れない。

「ふーん」と言って、少しの間黙ってから、すっと立ち上がった。



「....必要とか、そういうのじゃないんだよ」



そして、見上げる私に、彼は静かに言った。



「百合が本当の意味で僕のこと好きになってくれないと、僕はずっと安心できないんだよ」



....あ。

どく、と胸の奥が響く。


そうだ、よね。そりゃあ、そうだ。

当たり前だ。私はまだ、このひとに今の気持ちの欠片も伝えてない。


「....そう、ですよね...」


思わずうつむくと、頭上からため息が聞こえて、少しビクリと肩が震えた。


...呆れられた...?


...あれ、なんで私、こんなに怯えてるんだろう。

先輩に呆れられることなんて、何度もあったのに。


....なんで、こんなに。



< 349 / 549 >

この作品をシェア

pagetop