キミじゃなきゃダメなんだ
今にも泣き出しそうな男性に、ひきつった笑いでなんとか話しかけた。
「だ...大丈夫ですよ。大丈夫ですから、とりあえず寒いので、建物の中に入りたいんですけど....」
「も、もちろんです!すみません、さぁこちらへ....!」
スタッフに促されて、とりあえず歩き始めた。
遊園地で水被るって。
しかも仮にもデート中......
水でびしょ濡れになっている私達を、遠巻きに周りの客が気の毒そうに見てくる。
十一月のはじめに水を被るのは、なかなかにキツい。
あと、先輩がさっきから無言だ。頼む、何か喋ってくれ。
あそこに立ち止まらせてしまったせいで、先輩まで水を被ることになってしまった。
申し訳なさすぎてもう土下座したい。タイミング悪すぎるよスタッフのお兄さん。
まさか、この二週間の間に二度も大量の水をお見舞いされるとは。
私、そんなに水運悪いのか?