キミじゃなきゃダメなんだ


耐えていると、窮屈さも相まって、なんだかイライラしてくる。

全ては、弟のせいだ。

いつもなら、もっと元気よく里菜と、ときどきチョコちゃんと、楽しく登校していたのに。



そう。いつも通りじゃなかったのは、私がイライラしていたことくらいだった。

なんとなく視線をずらして、見えた先で。


痴漢に震える女性を、見つけるまでは。



「...!」


驚いて、寝不足で落ちそうになっていた瞼を勢い良く開く。


うわ、まじっすか。

中年太りしたおっさんが、か弱そうな女性のお尻を触っている。


周りのひとは気づいていないのか、それとも注意する勇気がないのか、誰も何も言わない。

女性は今にも泣き出しそうなほど震えて、うつむいていた。


あのおじさん、文庫本を持って読んでるようなふりして、もう片方の手でさりげなーく触ってやがる!


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