キミじゃなきゃダメなんだ
里菜とチョコちゃんもいつのまにかスマホから顔をあげて、何事かと見ていた。
けど、おっさんはさらにヒートアップして、男子に掴みかかった。
ちょ...電車ん中だよ!常識考えろよぉ!
「このクソガキが!」
「....っ」
イケメンさんの顔が歪んだのを見た瞬間、私のなかで何かが切れた。
周りのひとも困惑した表情で、成り行きを見ている。
...でも私は。
見てるだけなのは、無理。
「あ」
チョコちゃんが私を見て、何かに気づいたように声を出した。
「マル、行く気だわ」
その通り!!
私は教科書類の入った重たーい荷物を持って、ずんずんと満員電車内を掻き分けていく。
やがて現場にたどり着くと、いまだにイケメンさんの襟元を掴んで、何かを言っているおっさんの後ろに立った。