I先輩
2歳しか違わないのに、そう考えられる先輩は、やっぱり大人だと思った。
すると真剣な話の最中に、ケーキの焼き上がった音がオーブンから鳴った。
「試作品、焼けた」
今までの話がなかったかのように普通に梨乃ちゃんが言う。
わたしと槇先輩は、顔を見合わせて思わず笑ってしまった。
「あ、食べる?ケーキ」
「食べるーっ!」
「いただきます」
そして三人で試作品のケーキを食べた。
梨乃ちゃんはいつの間にか先輩に慣れていて
声のトーンはいつも通りだし、タメ口だし…
「あ、そうだ」
梨乃ちゃんは急に立ち上がると、カワイイ袋に余ったケーキを入れた。
「ん。半分あげるよ、先輩に持ってくんでしょ?」
そう言ってわたしの前にケーキの入った袋を差し出した。
「いいの?」
「持ってきな」
フンッと鼻を鳴らす梨乃ちゃんに、思わず抱きついた。
「ありがとーっ!」