I先輩
 


たぶん隣の部室の人たちにも今の聞こえてただろうなぁ

そんなことより…



「…見たんですか?」

「「え」」



わたしは二人の顔を交互に見て言った。



「いや…見たっつーか…見えたっつーか……なぁ?」

「そーそー出来心…じゃなくて、たまたま!」

「もー入部取り消しますっ!!」



急いで部室を出ようとするわたしの手をカズ先輩が掴んだ。



「はなしてくださいぃー」

「まっ…ちょ、まとうよ!ちゃんと話し合お?ね?」

「これ以上話すことなんてありませんーっ」

「俺らが悪かったって!!ほらカズの大事にしてた春季限定のおかしコレクションやるから!!!」



千彰輩が腕にいっぱいおかしを抱えてきた。

ずるい…"限定"って言葉に女の子は弱いのに。



「それなら…」

「あー!!それはだめっ!!!!!」



わたしがおかしに手を伸ばすと、カズ先輩が急いでおかしを取り上げた。



「これじゃなきゃ…だめ?」

「……………」



わたしは小さく頷いた。



< 11 / 152 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop