I先輩
 


「今回だけは、人のモノになる前に欲しかった。」



先輩が片手でわたしのほっぺたに触れる



「………え?」



訳がわからない

それは、何に対して?



「……なぁ、もし俺がお前のこと好きって言ったらどーする?」



わたしが目を丸くしたまま黙っていると、先輩が笑った。



「深く考えんなよ、"もし"っつったろ」



深く考えるなって言われても…

イキナリそんなこと言われたら誰だって戸惑うよ

わたしは下を向いて答えた



「たぶん…断ります、わたしにはカズ先輩がいますから。」

「そう言うと思ったし」

「当たり前じゃないですかっ!」



チラッと壁にかけてある時計を見ると、もう30分も経っていた。

わたしは慌てて携帯を握りしめると、ドアに手をかけた。


「あの、じゃあカズ先輩待たせてるんで…」



振り返る前にわたしの横にドンッと千彰先輩の両手がドアについた。


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