I先輩
ビックリして、うしろが振り返れない…
「じゃあ、無理矢理にでも奪うっつったら…?」
耳元で聞こえる低い声に、肩がビクッと揺れた。
静かな部室に、わたしの携帯電話の鳴る音が響いた。
「あの…電話……」
たぶん、カズ先輩からだ
出てもいいかを聞くためにそーっと後ろを振り返る。
すると、手から携帯を抜き取られた。
「え?ちょっ…「出んなよ」
先輩が電源ボタンを長押しして、携帯を床に放り投げた
「あ゙ー!!?なにするんですかっ!!!」
「頼むからさ、今は俺のことしか考えんなよ」
壁についていたはずの先輩の手が、いつの間にかわたしの背中にまわっていた。
腕ごと抱きしめられているわたしは、どうすることもできない
「マジ、今だけでいーから…」
先輩のオデコが肩につく。
なんで?
なんで先輩?
もしもの話…でしょ?
わたしの頭の中で、何度も何度も千彰先輩の言葉がリピートされていた。