I先輩
その時廊下を誰かが歩いてくる音がして、先輩がわたしから離れた。
先輩は床に落ちている携帯をわたしに渡すと、わたしの体を反転させてドアの方を向かせた。
「行けば」
「……あの…っ」
首だけを後ろに向けると、先輩は頭をかきながら下を向いた。
「…俺、お前好きかも」
―ガラッ
先輩が言ったのと同時に、部室のドアが開いた。
「ことりちゃん…」
「カズ先輩っ!」
先輩、少し…汗、かいてる?
「携帯、見つかったんだ」
カズ先輩はわたしの手の中を見ると、ニコッと笑った。
「はい、あの…千彰先輩が一緒に探してくれて!」
なぜかとっさに、嘘をついてしまった。
「そっか、ありがとなーちあきっ」
「おー」
千彰先輩と少し目が合って、直ぐ様そらした。
なんであんなこと…言うんだろう
「じゃ帰ろ、ことりちゃん」
「はいっ」
カズ先輩に言われて部室を出た。