I先輩
目の前にある大きな扉。
ここには前に一度だけ、先輩と来たことがあった。
だからかな、やっぱり一人で入るのには勇気がいる。
コンコンと理事長室の扉をノックすると、中から小さく返事が聞こえた。
わたしはゆっくりと扉を開いた。
「しっ、失礼します…」
中に入ると、フカフカのイスに理事長さんが座っていた。
「あら、またあなたなの。
今日はどんなご用件かしら」
理事長さんはフッと笑うと、手を組んでヒジを机の上にのせた。
なんだかすごい迫力があった。
でも、ここで怯んじゃいけない。
堂々としてなきゃ…
「とぼけないでください」
「何のことかしら?」
真っ直ぐにわたしに向けられる視線。
わたしはそれをしっかりと睨みつけた。
「先輩に、会わせて下さい」