I先輩
 


「は?自惚れんじゃないわよ」



ですよねー!!?

わかってたよ、わかってたけどさぁー

そんな言い方しなくてもいいじゃん



「内緒、って夏目先輩に言われてたんだけどさ…」



梨乃ちゃんはハァと一度深呼吸をしてから語り始めた。

あの日、わたしとカズ先輩が理事長室に入ってサインを貰えなかった後のこと。

カズ先輩は忘れ物をしたってわたしに嘘をついて、もう一度、理事長に頼みに行ったんだ。

それを梨乃ちゃんがたまたま見てて、扉に耳を当てて…



「ねぇ、それって盗み聞き?」

「いいから黙って聞きなさいよ」



目が怖いよ、梨乃ちゃん…。

梨乃ちゃんはわたしに構わず続けた



「『俺は今がすっげー楽しいんだ、だから俺から今を奪わないでほしい』って夏目先輩、理事長に頭下げてた。
それで理事長が『自分とちゃんと口を聞いてくれるなら』って、交換条件を出したの」




あぁ、だから理事長はあの時…

『あなたのおかげで』って…


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