I先輩
「すぐ戻るから、みんなと待ってて」
笑顔でそう言ってわたしの頭をなでると
カズ先輩は歩いてきた道をまた戻って行った。
「忘れ物って…紙しか持ってなかったのに?」
それよりも…
わたしは何て言って部室に入ったらいいんだろう…
さっき言われたことなんて言えない
『廃部決定ね』
あの一言がすごく怖かった。
―ガラッ
「治田さん?」
急にドアがあいて、槇先輩の声がした。
「そんなとこいないで中に入ったらどうですか?」
「………っ」
わたしは思わず槇先輩の制服の裾を掴んだ。
「治田さん?」
「…だめ…でしたっ」
下を向くと床にポタポタと涙がこぼれた。
もう…今までみたいにみんなとはいられないんだ。
一緒にいたのは短かったけど、短い時間の中で収まりきらないくらいいっぱいの思い出があって…