I先輩
 


「あ、夏目先輩」

「えっ」



とっさに前を向くと、廊下の向こう側から歩いてくるカズ先輩が見えた。



「…っ、ユズちゃん行こっ」

「え、いーの?あいさつしなくて」



たぶん、先輩はまだわたしに気づいてない

わたしはユズちゃんのシャツの袖を引っ張った。



「こーとりちゃん!」



―ビクッ



名前を呼ばれて、小さく肩が揺れる。

気付かれ…ちゃった……



「あ、私先行ってるね?」



ユズちゃん、お願いだから今は気を遣わないで?

そうユズちゃんの後ろ姿に目で訴えかけたけど、伝わるわけもなく…

姿はすぐに見えなくなってしまった。



「ことりちゃん?」

「はっ…はい!」



そして気づけばカズ先輩がすぐ後ろに立っていた。


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