I先輩
 


"夏目先輩"
無意識にそう呼んだのは、距離をとるため



「………っ…」



わたしは急いで階段をかけ上がった。

梨乃ちゃんの横を通り過ぎようとした時、腕をつかまれた。



「琴璃、ちょっと来て」



梨乃ちゃんは一緒にいた友達に先に行っててと言うと、わたしを屋上に連れて行った。










「さっきの、なに?」



なんだか知らないけど…

梨乃ちゃんが、怒ってる。



「ねぇ琴璃、なんで先輩にあんなこと言ったの?」

「ごめんね…梨乃ちゃん、わたし本当に先輩のことは何とも…」

「あたしは琴璃は夏目先輩のことが好きなんだと思ってた」

「違っ…!!」

「なんで否定すんの?」



それは…

梨乃ちゃんの好きな人だから…

でも…もうだめだ…

もう自分に、嘘つけない



「ごめん、ごめんね梨乃ちゃん…
わたし、カズ先輩のこと…好きになっちゃって……」



今まで抑えていた気持ちが一気にあふれだした。


< 71 / 152 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop