I先輩
"夏目先輩"
無意識にそう呼んだのは、距離をとるため
「………っ…」
わたしは急いで階段をかけ上がった。
梨乃ちゃんの横を通り過ぎようとした時、腕をつかまれた。
「琴璃、ちょっと来て」
梨乃ちゃんは一緒にいた友達に先に行っててと言うと、わたしを屋上に連れて行った。
「さっきの、なに?」
なんだか知らないけど…
梨乃ちゃんが、怒ってる。
「ねぇ琴璃、なんで先輩にあんなこと言ったの?」
「ごめんね…梨乃ちゃん、わたし本当に先輩のことは何とも…」
「あたしは琴璃は夏目先輩のことが好きなんだと思ってた」
「違っ…!!」
「なんで否定すんの?」
それは…
梨乃ちゃんの好きな人だから…
でも…もうだめだ…
もう自分に、嘘つけない
「ごめん、ごめんね梨乃ちゃん…
わたし、カズ先輩のこと…好きになっちゃって……」
今まで抑えていた気持ちが一気にあふれだした。