I先輩
あの笑顔で頼まれたら…なにも言えない。
わたしは思わず「はい」と返事をしてしまった。
「料理したこともないくせに、ばかじゃん?」
梨乃ちゃんがエプロンをつけながら言う。
ここは、家庭科室。
今日から1週間、二人の特訓が始まる。
「まぁ誰かがやんなきゃいけないことだし、いーけどさ。
問題は…なに作るよ?」
「テーマが大きすぎるよねぇ…」
パラパラと料理の本を捲る。
"笑顔になる料理"なんて、そんなのわかんないよ
だいたい審査する人がもしその料理を嫌いだったら、話にならない。
みんなが好きな物を作らなきゃ
「みんなが好きなものって、なにかな…?」
「さぁ…スイーツとか?」
スイーツ…かぁ……
だめだ…なんにも思いつかない。
「とりあえず、何か作ってみよ」
梨乃ちゃんが腕を捲って言う
わたしも慌ててマネした。
「それより…梨乃ちゃんて料理できるの?」
「……………は?」
梨乃ちゃんは包丁を握ってこっちを見る
怖いよ、梨乃ちゃん…