I先輩
しばらく走っていると、階段に座り込んでブツブツ言っている先輩を見つけた。
「せん…ぱい?」
「俺は役立たず…俺は…役立たず…」
落ち込んでる
わたしは思わず笑ってしまって、先輩の横に座った。
「わたしも、梨乃ちゃんに役に立たないって言われちゃいました。
恥ずかしいんですけど…わたし料理なんて何もわからなくて…」
「ことりちゃん…」
先輩と目が合う
わたしはまた笑った
「…いいんじゃないですか?
似たもの同士で」
先輩も前を向き直して笑う
「そーだねっ」
そして、どちらからともなく手をつないだ。
「ねぇ、ことりちゃん
俺のために作ってよ、料理」
カズ先輩のために…?
"笑顔になる料理"かぁ…
「はいっ」
ギュッと手を握った。
それよりもっと強く握り返してくる先輩の手は、大きくてあったかかった。