花明かりの夜に
ただくやしくて、腹が立った。

涙がにじむほど。


(悔しい、悔しい――

でも、わたしじゃこの人には勝てない)


最初から手のひらの上で踊らされていたのだ。


それでも刀をふたたび構えようとする。

降参なんてしない。


「別に手加減していたわけじゃない」


肩で息をする沙耶と違い、一糸乱れぬまるで平静な状態の紫焔。


「守りに徹していただけでね」

「……」


(だめ、着物がはだけてしまう)

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