花明かりの夜に
(――何を……)


「……」


柄をにぎったまま、何事もないかのようにあでやかにほほえむ、憎らしい笑顔。

思わず顔をそむけた。


「……おたわむれを」

「戯れなものか。

降参するの? それともまだやる?」


降参なんてしたくない。

でも、着物ごと壁に串ざされた状態で、一体何が出来る?


「若さま……

もう、お許しください……」

「ふふ、やっと負けを認めたの?」


紫焔は刀の柄を握ったまま、妖艶にほほえんで沙耶の顔をのぞきこむ。
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