花明かりの夜に
「まったく、君は意地っ張りだね」


黒い艶やかな瞳が、目の前いっぱいに広がった。


「……」

「何にそんなに意地を張っているの?」

「……」


黒い瞳から、目をそらした。

目を合わせると妖術にかかってしまいそうな気がして。


「沙耶――こっちを向いてごらん。

――何を恐れているの?」


袖からのぞく優雅な指先が、沙耶の頬から唇をすべる。


「まったく、ここまでしないと君を捕まえられないとは、ね」

「……」

「わたしが嫌い?」
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