花明かりの夜に
 * * *



「沙耶、君はすごいね」


荒い呼吸がおさまってくると。

紫焔は優雅にほほえんだ。


寝床に肘を立てて、乱れた長い黒髪を垂らすままにして。

紫焔に背を向ける沙耶のむきだしの肩に指先を這わせる。


「――ふだんはとりすました女が乱れるのにはぐっと来るよ」

「……」


つつと肌をすべる指先が、沙耶の手をそっと包んだ。

指と指をからめると、ぎゅっと握る。


「とてもきれいだよ、沙耶」

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