花明かりの夜に
「男たちが毎晩のように君を見たさに通うはずだね」

「……!」


はっ。

自分の、大きく息を吸い込む音が聞こえた。


世界が突然白黒になって。

急に顔からさぁぁ……と血の気が引いて。

指先がガクガクと震えだす。


(まさか――)


「あやめ、というのは本名? ――それとも芸名?」

「……」

「沙耶、が本名なの?」

「……若さま」


消え入りそうな声が、自分の唇から漏れた。
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