花明かりの夜に
「はい、これ。遅くなって申し訳ない。

――そうだ、ご主人、今日は読み売りが出ていたよ」

「おお、いつもすまないね」

「じゃあ、また明日に。いつもの量でいいかな」

「ああ、そうだな。よろしく。

……どれどれ」


豆腐屋が去ると。

手渡された一枚の読み売りを、老主人は少し離してながめた。


「ほほう。

なんと、これは驚いた」


老主人の声に、沙耶は顔を上げた。


「何か変わった知らせでもありました?」
< 169 / 224 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop