花明かりの夜に
「……若さまが、とうとうご結婚されるそうだよ。

ようやく身を固めるお気持ちになられたらしい」


「……そう、ですか……

それは、それは」


ズキン。


(あ……)


バリン


音を立てて、心のなかで何かが割れた。

不意に目の前が真っ暗になって倒れそうになるのを、かろうじてほうきで支える。


(何を今さら衝撃を受けているの?

あの方のもとから去ったのは自分なのに。

いつかはこういう知らせに遭うことはわかっていたはずよ)
< 170 / 224 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop