花明かりの夜に

「……?」


(誰かがじっと見ているような)


紫焔の相手として読み売りに派手に書き立てられてはいるけれど、まだ直接沙耶を知る人は少ないはず。


(気のせいかしら)


意識しすぎなのかもしれない。


(気にしないのが一番ね)


沙耶は再びくるりと前を向きかけて。


「……!」


人々の間から見覚えのある顔を見つけて、その途端、体が石のように動かなくなった。


(あ……!)

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