花明かりの夜に
「ずいぶん色気が出たもんだな、奥方さまよ」

「……」


(こんな男を、少しでも良いと思ったことがあるなんて)


こんな粗野な、気味悪い男を。


「おまえのこの体とその顔でたらしこんだのか?

おまえにかかっちゃ、良家の若さまもイチコロだな。

なかなかどうして、大したもんだ」

「……」


思わず後ずさると、壁にぶち当たった。


(紫焔さまを侮辱しないで!)


怒りをぶつけたいのに、声すら出ない。

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