花明かりの夜に
どうするも何も、力ではまったくかなわない。

いやでも昔のことを思い出して、くやし涙が目尻から流れ落ちた。


(最初もこうだった。力にものを言わせて、人を言いなりにして)


悔しい。


(自分から乱暴しておいて、それをネタにまた人を脅すなんて)


“おまえの若さまもそれはそれは恥ずかしい思いをするだろうよ”


(そんなのイヤよ。わたしのせいでそんな――)


いやな汗が額から流れる。


(やっぱりわたしなんて、良家の若さまに嫁いではいけない人間だったんだ)


これが現実。

紛れもない現実。

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