花明かりの夜に
「今度はそれをネタにわたしを強請りに来るなんて、いったいどこまで性根が腐ってるの?

恥を知りなさい!」


「何だ何だ」


何の騒ぎだとばかりに、足を止めた通行人たちが二人を取り囲む。

しばし唖然とした弥之介は、やっと沙耶の言葉が飲み込めて、顔を真っ赤にした。


「ずいぶんな言い草だな。

おまえのこと、あんなにかわいがってやったのに」

「力で支配して男に体を売らせるのが、かわいがるってことなわけ?

さんざん稼がせておいてビタ一文与えず、逃げ出せないようにしていたくせに!

あんたなんか大嫌い。

顔を見るだけで反吐が出そうよ。見るのもイヤ。声すら聞きたくない」

「……この売女!

下手に出てりゃいい気になりやがって」
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