花明かりの夜に
「去れ」


凛とした声。


「急所ははずしてある。

命を取らないだけありがたいと思え。

もうわかっただろう。おまえなど沙耶には何の影響力もない。

――二度と妻の前に現れるな」


陽の光を背に受けて浮かび上がる、馬上の影。


「もう一度沙耶の前に現れたときは――そのときは命がないと思え」

「クソ、覚えてろよ、このクソアマ」


小汚い捨て台詞を吐いて。

肩から矢を生やしたまま、弥之介は転げるように走り去った。

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