花明かりの夜に
「紫焔さま!」

「無事か、沙耶」


紫焔はひらりと馬から飛び降りると、沙耶を抱き寄せた。


「もう大丈夫だ」

「紫焔さま……」


ほっとすると、涙があふれて。

心臓が激しく打っているのに、初めて気づいた。


「よくやった、沙耶」

「……はい」

「手を出そうとしなければもう少し様子を見たところだったけれど」

「……」


声にならずに、ただ何度もうなずいた。

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