花明かりの夜に
「おや、紫焔さまだ」

「若さまだ」


ふと気づくと、周りに幾重も人々が取り囲んでいた。


「みんな、騒がせてすまなかったね。

わたしの妻につまらない言いがかりを付ける男がいてね」


“妻”


あでやかにほほえむ紫焔に魔法にかけられるように、人々はぽかんと口を開いて紫焔を見つめた。


「おや、じゃあこのお嬢さんが若さまの……」

「やぁ、これはずいぶんな別嬪さんだ」


口々に言う人々の声が波のように寄せて。


「おめでとうございます、若さま」

「こりゃめでたいな」
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